「新聞紙」で変身ごっこも造形も!安価で安全な新聞紙遊びで子供の創造性・探求心を育む:保育での実践アイデアとねらい
新聞紙遊びが子供の学びを広げる可能性
保育の現場では、子供たちの「好き」や探求心を引き出す遊びのアイデアが常に求められています。特別な道具や高価な材料がなくても、身近なものから豊かな学びは生まれます。その中でも、新聞紙は安価で安全、そして驚くほど多様な遊び方ができる優れた素材です。
新聞紙を使った遊びは、子供たちの五感を刺激し、自由な発想で遊びを深める機会を提供します。破る、丸める、積む、広げる、隠れる、変身するなど、シンプルながらも身体全体を使ったダイナミックな遊びから、集中力を要する細かい作業まで可能です。これらの経験を通して、子供たちは様々な素材の性質を知り、自分の体をどのように使えば面白いことができるかを学び、尽きることのない探求心を育んでいきます。
この記事では、新聞紙を使った遊びがどのように子供たちの創造性や探求心を刺激し、多様な学びにつながるのかを解説し、保育の現場で実践できる具体的なアイデアとそのねらいを紹介します。
新聞紙を使った遊びの具体的なアイデアと実践方法
ここでは、新聞紙を使った様々な遊び方とその準備、手順をご紹介します。子供たちの年齢や興味に合わせてアレンジしてみてください。
1. 新聞紙を「破く」「丸める」「積む」感触遊び
- 遊びの概要と目的: 新聞紙を好きなように破ったり、丸めたり、それを集めて積み上げたりするシンプルな遊びです。新聞紙の音や手触り、破れる感触などを五感で感じ取るとともに、指先や腕全体の協調性を養います。
- 準備するもの: 大量の新聞紙
- 具体的な手順や方法:
- 広い場所に新聞紙を広げます。床にシートなどを敷くと片付けが楽になります。
- 「好きなように破いていいよ!」「くしゃくしゃに丸めてみよう!」などと声をかけ、子供たちが自由に新聞紙に触れられるように促します。
- 破いた新聞紙を高い山にしたり、丸めた新聞紙をボールにして投げ合ったり、箱に詰めたりして遊びを発展させます。
- 年齢別のポイントや難易度調整のヒント:
- 乳児クラス(0〜1歳児):破る、丸めるといった基本的な動作や、カサカサ、ビリビリといった音や感触を楽しむことを中心に。誤飲に注意し、大人が見守りながら行います。
- 幼児クラス(2〜5歳児):破いた新聞紙で大きな塊を作ったり、特定の形を目指したり、ルールのある遊び(例えば、箱に新聞紙ボールを入れる競争)を取り入れたりできます。
- 限られたスペースや予算で実施するための工夫: 広いスペースがなくても、コーナーを設ける、時間で区切るなどの方法で実施できます。新聞紙は家庭から提供してもらうなど、予算をかけずに準備できます。
- 集団での活動と個別の関わり方のヒント: 集団では、みんなで協力して大きな山や塊を作る、片付け競争をするなどが盛り上がります。個別には、子供が夢中になって破いている様子を静かに見守ったり、「面白い音だね」「上手に丸められたね」と声をかけたりして、その子の「好き」に寄り添います。
2. 新聞紙で「変身ごっこ」と衣装作り
- 遊びの概要と目的: 新聞紙を使って、マントや帽子、剣などを作り、様々なものに変身して遊ぶ創造的な遊びです。想像力や表現力、身の回りのものを別のものに見立てる力を養います。
- 準備するもの: 新聞紙、セロハンテープやガムテープ
- 具体的な手順や方法:
- 子供たちにどんなものに変身したいか尋ねたり、「マントを作ってみようか」と提案したりします。
- 新聞紙を体に巻き付けたり、細長く丸めて剣にしたり、三角に折って帽子にしたりと、自由に形を作ります。必要に応じてテープで固定します。
- 作った衣装や小道具を使って、変身ごっこや劇遊びを楽しみます。
- 年齢別のポイントや難易度調整のヒント:
- 2〜3歳児:大人が作ったマントや帽子を身につけて、簡単な変身ごっこを楽しむことから始めます。
- 4〜5歳児:自分で作りたいものを考え、新聞紙を折ったり丸めたり、テープを使ったりしながら本格的な衣装や小道具作りに挑戦できます。友達と一緒にテーマを決めて遊ぶこともできます。
- 限られたスペースや予算で実施するための工夫: 数人ずつのグループに分けて行ったり、特定のコーナーに「変身ステーション」を設けたりします。
- 集団での活動と個別の関わり方のヒント: 集団では、「〇〇レンジャーに変身!」「動物園ごっこをしよう」などテーマを決めて遊ぶと、協調性や役割意識が育まれます。個別には、子供の「こんなものを作りたい!」というアイデアを引き出し、実現できるようにサポートします。
3. 新聞紙の「プール」や「雨」で全身の感覚を刺激
- 遊びの概要と目的: 破いた新聞紙を大量に集め、その中に埋もれたり、投げ合ったり、上から降らせたりするダイナミックな感覚遊びです。全身で新聞紙の感触や音を感じ取り、開放的な気分を味わうことで、ストレス解消やリラックス効果も期待できます。
- 準備するもの: 大量の新聞紙(遊ぶ人数が多いほどたくさん必要)、大きなビニールプールや箱(なくても可)、シート
- 具体的な手順や方法:
- 広いスペース(ホールなど)にシートを敷き、破いた新聞紙を敷き詰めます。ビニールプールなどを使う場合は、その中に新聞紙を入れます。
- 子供たちは新聞紙の中に寝転がったり、埋もれたり、新聞紙を掴んで投げたりして遊びます。
- 高いところから新聞紙をパラパラと降らせて、「新聞紙の雨だ!」と楽しむこともできます。
- 年齢別のポイントや難易度調整のヒント:
- 全年齢:乳児から幼児まで楽しめます。乳児は寝転がったり、感触を楽しんだり。幼児はよりダイナミックに投げ合ったり、隠れたり鬼ごっこをしたりと発展させられます。
- 限られたスペースや予算で実施するための工夫: 一度に全員ではなく、グループごとに行います。使う新聞紙の量を調整したり、大きなビニール袋に新聞紙を入れて簡易プールにしたりするのも良いでしょう。
- 集団での活動と個別の関わり方のヒント: 集団では、みんなで新聞紙を投げ合う、お山を作るなどが盛り上がります。個別には、新聞紙に埋もれて安心している子、思い切り体を動かしたい子など、それぞれの楽しみ方を受け止め、安全を見守ります。
新聞紙遊びで育まれる力(ねらい)
新聞紙を使った遊びは、単に楽しいだけでなく、子供たちの様々な発達を促す重要な機会となります。主なねらいを以下に示します。
- 五感の発達: 新聞紙の「カサカサ」「ビリビリ」といった音、クシャクシャとした手触り、インクの匂いなどを感じ取ることで、五感が豊かに刺激されます。
- 創造力・表現力: 新聞紙を様々なものに見立てたり、自分のイメージを形にしたりする過程で、自由な発想と創造性、そしてそれを表現する力が育まれます。
- 探求心・試行錯誤: どうすればもっと面白くなるだろう?どうやったらこれができるかな?と試行錯誤を繰り返す中で、物事を探求する姿勢や問題解決能力が養われます。
- 身体能力・巧緻性: 新聞紙を破る、丸める、積むといった指先の細かい動きから、全身を使って新聞紙を運び、投げ合うといったダイナミックな動きまで、様々な身体の使い方が経験でき、巧緻性や全身の協調性が育まれます。
- 社会性・協調性: 友達と一緒に大きなものを作ったり、変身ごっこで役割を演じたり、新聞紙を使った簡単なルールのある遊びを通して、協力することの楽しさや、相手を意識すること、ルールを守ることなどを自然と学びます。
- 集中力: 夢中になって新聞紙を破り続けたり、細部までこだわって何かを作ったりする中で、一つのことに集中する力が培われます。
- 自己肯定感: 自分のイメージを形にできた、友達と一緒に何かを成し遂げられた、思い切り体を動かして楽しめたといった経験は、達成感や満足感につながり、自己肯定感を高めます。
実践上のポイントと安全への配慮
新聞紙遊びを安全に、より豊かに展開するためのポイントです。
- 安全管理:
- 子供たちが新聞紙を口に入れないよう注意深く見守ります。特に乳児クラスでは重要です。
- 新聞紙が床に散乱すると滑りやすくなるため、遊びに夢中になりすぎて走り回るなどしないよう声かけを行います。
- 新聞紙を投げ合う際は、顔や目に当たらないようルールの確認や場所の配慮が必要です。
- 片付けは遊びの一環として、子供たちと一緒に行うように促します。
- 環境設定:
- できるだけ広いスペースで行うのが理想的です。
- 床が傷ついたり汚れたりしないよう、シートやブルーシートを敷くことを検討します。
- 換気を十分に行い、ホコリが舞いすぎないように注意します。
- 導入の工夫:
- いきなり大量の新聞紙を出すよりも、「これ、なんだと思う?」「ビリビリって破いてみよう!」など、子供たちの興味を引きつけるような導入をします。
- 保育士が楽しそうに破いたり丸めたりする様子を見せるのも有効です。
- 片付け:
- 新聞紙遊びの後は大量の新聞紙が出ますが、片付けまでを遊びの一部として位置づけることが大切です。「新聞紙さん、バイバイしようね」「どっちがたくさん集められるかな?」など、声かけを工夫しながら子供たちと一緒に片付けを行います。
応用例と保護者への説明
- 他の素材との組み合わせ:
- セロハンテープやガムテープ、のり、ハサミ(年齢に応じて)を使うと、より複雑な造形が可能です。
- 絵の具やクレヨンで色を塗ると、表現の幅が広がります。
- 段ボール箱と組み合わせれば、秘密基地や乗り物、家なども作れます。
- ビニール袋に詰めて大きなボールにしたり、人形にしたりすることもできます。
- 保護者への説明に役立つ視点:
- 新聞紙遊びが、子供たちの五感の発達、創造性、探求心を育む素晴らしい機会であること。
- 家庭にある不要になった新聞紙が、子供にとっては安全で可能性に満ちた遊び道具になること。
- お家でも、一緒に新聞紙を破いたり、丸めたり、変身ごっこをしたりして、親子で気軽に楽しんでみてください、と伝えることができます。片付けは大変ですが、それも遊びの一部として楽しむ視点を共有すると良いでしょう。
まとめ
新聞紙は、身近で特別な準備がいらない素材でありながら、子供たちの探求心と創造性を刺激し、多様な学びを引き出す無限の可能性を秘めています。破る、丸める、変身するなど、シンプルながらも全身を使った遊びや、集中力を要する細かい作業を通して、子供たちは五感を使い、様々な力を育んでいきます。
保育士の皆様には、ぜひ子供たちの自由な発想を大切にしながら、新聞紙という素材を最大限に活かした遊びを実践していただきたいと思います。子供たちの「好き」が輝き、主体的な学びが生まれる瞬間を、新聞紙遊びを通してたくさん見つけていきましょう。安全に配慮しつつ、子供たちと一緒に、新聞紙の新しい可能性を発見していく日々を楽しんでください。