「つめたい!あったかい!」「ザラザラ!つるつる!」感覚遊びで子供の探求心と五感を刺激:保育での実践アイデアとねらい
五感をフル活用!子供の探求心を刺激する感覚遊びの重要性
子供たちは、身の回りの世界を五感を通して認識し、学びを深めていきます。「これはどんな音がするのかな?」「どんな匂いかな?」「どんな手触りかな?」といった素朴な問いかけから、探求心や思考力が育まれるのです。特に触覚や温度感覚は、乳幼児期から発達する重要な感覚であり、様々な素材に触れる体験は、子供たちの心身の発達にとって欠かせません。
本記事では、子供たちが「つめたい!」「あったかい!」「ザラザラ!」「つるつる!」といった感覚に気づき、自ら探求したくなるような、触覚や温度感覚を刺激する遊びのアイデアとそのねらいをご紹介します。身近な素材を活用することで、限られた環境や予算でも実践可能です。これらの遊びを通して、子供たちの五感の発達、言葉による表現力、そして何よりも「もっと知りたい!」という学びへの意欲を引き出しましょう。
触覚・温度感覚を刺激する遊びのアイデア
ここでは、子供たちの触覚や温度感覚を豊かに育む具体的な遊びをいくつかご紹介します。準備も比較的簡単で、保育の日常に取り入れやすいものを選びました。
1. 感触ボックス/バッグ
- 遊びの概要: 中身が見えない箱や袋の中に様々な素材を入れ、手触りだけでそれが何かを当てたり、感触の違いを楽しんだりする遊びです。
- 準備するもの: 空き箱(靴箱など)や布袋、中にいれる様々な素材(毛糸玉、砂、豆、木の実、葉っぱ、石、スポンジ、布切れ、金属片、プラスチック製品など、安全で清潔なもの)。
- 具体的な手順:
- 箱や袋に、子供たちが安全に触れられる様々な素材を数種類入れます。
- 子供に箱や袋に手を入れてもらい、中の素材を触ってもらいます。
- 「どんな感じ?」「つるつる?ザラザラ?」「硬い?柔らかい?」など、言葉で表現することを促します。
- 「この感触のものはどれかな?」と特定のものを見つけたり、中に何が入っているか予想したりします。
- 年齢別のポイント:
- 乳児: 安全な素材を選び、ただ触れて感触そのものを楽しむ時間を大切にします。「ふわふわだね」「冷たいね」など、保育者が言葉を添えて感覚と結びつけます。
- 幼児: 触感を言葉で表現することに挑戦したり、複数の素材の感触を比較したり、推理遊びとして楽しんだりします。
- 限られた環境での工夫: 園庭の自然物(石、葉、枝など)や、家庭から持ち寄った安全な廃材(ペットボトルのキャップ、段ボール片、包装紙など)を活用できます。
2. 温度探検遊び
- 遊びの概要: 温度の異なるものに触れることで、「つめたい」「あったかい」「ぬるい」といった温度感覚に気づき、その違いを楽しむ遊びです。
- 準備するもの: 安全な温度に調整した水(冷たい水、ぬるま湯、常温水)、氷、温度の異なる素材(日向で温まった石、日陰の石、冷たい金属のスプーン、温かい布など)、温度計(任意)。
- 具体的な手順:
- 複数の容器に、安全な温度(子供が火傷や凍傷をしない温度)に調整した水を入れ、温度の違いがあることを伝えます。
- 子供にそれぞれの水に手を入れてもらい、「どんな感じ?」と尋ねます。
- 「つめたいね」「あったかいね」など、保育者が言葉で表現を促します。温度計があれば、実際の温度を見せて、感覚と数値を結びつけることもできます(幼児向け)。
- 水だけでなく、氷や温かい布、冷たい石など、身近なもので温度の違いを感じる活動も行います。
- 安全上の注意点: 必ず保育者が温度を確認し、子供が安全に触れられる温度(目安として30℃~40℃程度、冷たいものは冷たすぎないように)に調整してください。 氷は直接長時間握らせないように注意します。
- 限られた環境での工夫: 冷蔵庫で少し冷やしたタオルや、お湯で温めた(しかし熱すぎない)タオルなど、日常的なもので簡単に温度の違いを体験できます。
3. 感触ロード/素材広場
- 遊びの概要: 異なる感触の素材を床に敷き詰めたり、一箇所に集めたりして、子供が自由に触ったり、裸足で歩いたりする遊びです。
- 準備するもの: 敷くためのシートやマット、異なる感触の素材(毛布、ゴザ、砂、小石、葉っぱ、芝生、段ボール、プチプチシートなど)。
- 具体的な手順:
- 安全な場所にシートを敷き、その上に様々な感触の素材を並べたり、敷き詰めたりします。
- 子供に靴下を脱いで裸足で歩いてもらったり、手で触ったりして、感触の違いを感じてもらいます。
- 「ここ歩くとゾクゾクするね!」「こっちはフワフワだよ」など、気づきを共有し、言葉で表現する機会を作ります。
- 限られた環境での工夫: 室内であれば、家にある毛布やタオル、段ボール、新聞紙などを活用できます。園庭であれば、土、砂、芝生、小石、落ち葉など、自然物をそのまま活用するのが最も簡単です。
遊びのねらいと期待される効果
これらの触覚・温度感覚を使った遊びは、子供の様々な発達を促す重要な活動です。
- 五感の発達: 特に触覚、温度覚といった感覚を刺激し、脳の発達を促します。様々な刺激に触れることで、感覚が研ぎ澄まされ、微細な違いにも気づけるようになります。
- 探求心・好奇心の育成: 「これはなんだろう?」「どうして冷たいのかな?」といった素朴な疑問から探求心が生まれます。自分で触って試すことで、主体的な学びの姿勢が育まれます。
- 言葉による表現力の向上: 感じたことを言葉で表現しようとすることで、「つるつる」「ザラザラ」「ひんやり」「ぽかぽか」といった豊かな感覚を表す語彙が増えます。保育者が適切な言葉かけをすることで、子供は自分の感覚に名前をつけられるようになります。
- 認知能力の発達: 素材の感触や温度の違いに気づき、分類したり比較したりする中で、観察力や識別能力、論理的な思考の基礎が養われます。
- 情緒の安定: 安心できる素材(柔らかい布や温かいものなど)に触れることは、子供にとって心地よい体験となり、情緒の安定にも繋がります。特に tactile defensiveness(触覚過敏)を持つ子供に対しては、慣れることから始め、無理強いしない配慮が重要です。
- 科学的な芽生え: 温度の変化(氷が溶ける、水が温まる/冷める)や素材の性質(硬さ、柔らかさ、温度の伝わり方)に触れることは、身近な科学現象への興味関心を引き出し、後の理科や科学への学びの基礎となります。
実践上のポイントと安全への配慮
- 子供の安全第一: 使用する素材は、誤飲の危険がない大きさか、口に入れても安全か、アレルギーを引き起こす可能性はないかなどを十分に確認してください。尖ったものや破損しやすいものは避け、常に清潔を保ちます。温度に関わる遊びでは、必ず大人が温度を確認し、子供が安全な範囲で行えるように徹底してください。
- 無理強いしない: 感触や温度への感じ方は子供によって異なります。特定の感触を嫌がる子供もいます。無理強いせず、子供が自分から興味を示すのを待ち、安心できる環境で見守ることが大切です。少しずつ慣れられるよう、まずは遠くから見たり、保育者が触っている様子を見せたりするのも良いでしょう。
- 言葉かけの工夫: 子供が感じたことを言葉にするのを助けるような具体的な言葉かけを心がけましょう。「どんな感じ?」「何に似ているかな?」「こっちと比べてどう違う?」など、子供の思考を引き出す問いかけが効果的です。
- 自由な発想を大切に: 用意した遊び方だけでなく、子供たちが素材を使って自由に遊び始める姿を大切に見守りましょう。予想外の遊び方から、新たな学びや発見が生まれることがあります。
- 片付けも遊びの一部に: 遊びの後、使った素材を分類したり、元の場所に戻したりする過程も、素材の特性を再確認する学びの時間となります。
家庭や他の場所への応用、保護者への説明
これらの感覚遊びは、保育園だけでなく家庭や地域のイベントなどでも応用できます。例えば、お風呂の時間に様々な温度のお湯に触れたり、身近にある物の手触りを言葉にしながら探したりするだけでも、立派な感覚遊びになります。
保護者の方へは、保育園で行っている感覚遊びの目的と、それが子供たちのどのような成長に繋がるのかを具体的に伝えることが重要です。「今日〇〇ちゃんは、フワフワの布とザラザラの石を触って、『違う!』と面白い顔をしていましたよ。色々な感触に触れることで、言葉も豊かになりますし、身の回りのものへの興味も深まるんですよ」など、子供の具体的なエピソードを交えて説明すると、保護者の方も共感しやすくなります。家庭でも身近なものを使って簡単な感覚遊びを試せることを伝えると、家庭での学びの機会にも繋がるでしょう。
まとめ
触覚や温度感覚を刺激する遊びは、子供たちが世界をより深く知り、探求心を育むための素晴らしい機会です。身近な素材を活用し、子供たちの「つめたい!」「あったかい!」「ザラザラ!」「つるつる!」といった気づきや驚きを大切に見守り、言葉で表現することをサポートすることで、五感の発達、語彙力、認知能力、そして学びへの主体性を育むことができます。安全に最大限の配慮をしながら、これらの感覚遊びを日々の保育に取り入れ、子供たちの豊かな感性と探求心を育んでいきましょう。