「今日の天気、どうかな?」季節の移り変わりと天候の観察・記録遊びで育む子供の探求心と表現力:保育での実践アイデア
子供の「今日の天気どうかな?」から広がる学び
子供たちは、朝起きて外を見たり、散歩に出かけたりする中で、自然と空の様子や気温の変化に気づくことがあります。「今日はお日様ギラギラだね」「雨が降ってきた!」など、身近な天気や季節の移り変わりは、子供たちの五感を刺激し、探求心をくすぐる身近なテーマです。
これらの日常的な気付きを大切にし、意図的に遊びや活動に取り入れることで、子供たちは自然現象への興味を深めるだけでなく、観察力、記録する力、そして感じたことや考えたことを表現する力を育むことができます。ここでは、天気や季節の観察・記録・表現をテーマにした遊びのアイデアと、それが子供たちのどのような「好き」や学びを育むのかについて解説します。
天気や季節の観察・記録・表現遊びのアイデア
天気や季節の変化は毎日、毎瞬起こっています。それを「見る」「感じる」だけでなく、「記録する」「伝える」という活動に発展させることで、より深い学びにつながります。
1. 毎日、空の様子を観察しよう
- 遊びの概要: 毎日決まった時間(朝の会や午後の散歩前など)に窓の外や園庭から空を観察し、その日の天気を絵や記号、言葉で記録します。
- 準備するもの: 大きなカレンダーや模造紙、色鉛筆、クレヨン、天気マーク(晴れ、曇り、雨などの簡単な絵)のカード。
- 具体的な手順:
- 皆で空を見上げ、「今日の天気はどうかな?」と問いかけます。
- 子供たちから出た意見(晴れ、曇り、雨、風が強いなど)を聞き、話し合います。
- カレンダーや模造紙に、日付とその日の天気を記録します。絵を描いたり、事前に用意した天気マークのカードを貼ったり、年齢の高い子は簡単な言葉で書き加えたりします。
- 週末や月末に、記録したカレンダーを見返して天気の変化を振り返ります。
- 年齢別のポイント:
- 2歳児クラス: 簡単な天気マーク(お日様、傘など)を指差しで選ぶ。保育士が代筆する。
- 3歳児クラス: 天気マークを貼る、簡単な絵を描く。言葉で伝える練習をする。
- 4・5歳児クラス: 天気マークと合わせて、その日の気温や風の様子なども言葉で書き加える。自分たちでカレンダーに日付を書く。
2. 季節の移り変わりを五感で感じ、記録しよう
- 遊びの概要: 散歩に出かけたり、園庭や近隣の自然に触れたりしながら、季節の変化を五感で感じ取り、見つけたものを記録したり、表現したりします。
- 準備するもの: 観察ノート(自由帳やスケッチブック)、鉛筆、色鉛筆、落ち葉や木の実などを入れる袋、虫眼鏡。
- 具体的な手順:
- 「秋ってどんなものがあるかな?」「冬になるとどう変わる?」など、季節のテーマを決めます。
- 散歩や戸外遊びの時間に、テーマに沿って自然の中を観察します。
- 見つけたもの(色が変わった葉っぱ、どんぐり、虫、咲いた花など)を絵に描いたり、拾ったものを持ち帰って観察ノートに貼ったりします。
- 感じたこと(冷たい風、暖かい日差し、鳥の声など)を言葉や体で表現する機会を持ちます。
- 定期的に観察ノートを見返したり、拾ったものを展示したりして、季節の変化を共有します。
- 限られた環境での工夫: 園庭がなくても、近くの公園や街路樹を観察する。室内で、季節の絵本や写真、図鑑を見る。季節の歌を歌ったり、季節をテーマにした制作活動(落ち葉の貼り絵、冬の結晶作りなど)を行ったりする。
- 集団と個別の関わり: 皆で同じものに注目する集団観察と、「〇〇ちゃんはどんな葉っぱを見つけたの?」と個別の発見に寄り添う関わりを組み合わせます。
3. 天気や季節をテーマにした表現遊び
- 遊びの概要: 観察を通して感じた天気や季節のイメージを、絵、歌、劇、ダンス、言葉などで自由に表現します。
- 準備するもの: 画材(絵の具、クレヨン)、紙、楽器、衣装になりそうな布や小物。
- 具体的な手順:
- 観察の時間や絵本を読んだ後などに、「今日の天気はどんな色かな?」「雨の音はどんな音?」「風ってどんな形?」などと問いかけ、子供たちのイメージを引き出します。
- 子供たちが自由に絵を描いたり、体を動かしたり、歌を歌ったり、言葉にしたりする時間を設けます。
- 集団で「雨の日の劇遊び」「雪が降ってきたダンス」などを創作するのも楽しいでしょう。
- 保護者への説明に役立つ視点: 「お子さんは今日の雨を『ぴちょんぴちょん』って音で表現していましたよ」「お散歩で見つけた秋の葉っぱの色を、絵でとても上手に表していました」など、具体的なエピソードを伝えることで、家庭でも子供の気付きや表現に目を向けてもらうきっかけになります。
遊びのねらいと期待される効果
これらの天気や季節の観察・記録・表現遊びは、子供たちの様々な「好き」を刺激し、多様な学びを育みます。
- 探求心・科学的好奇心:
- 「どうして雨が降るの?」「葉っぱはどうして赤くなるの?」など、身近な自然現象への疑問や関心を引き出します。
- 継続的な観察を通して、変化や規則性(例えば、だんだん寒くなる、日が短くなるなど)に気づく機会を提供し、科学的な思考の芽生えを促します。
- 図鑑や絵本と連携することで、知識への興味も深まります。
- 観察力:
- 空の色、雲の形、風の強さ、植物や虫の変化など、注意深く周囲の環境を観察する力が養われます。
- 五感をフルに活用し、「見る」「聞く」「触る」「嗅ぐ」「感じる」といった感覚を研ぎ澄ませます。
- 記録する力・表現力:
- 観察したこと、感じたことを絵や記号、言葉で表現する練習になります。これは、自分の考えや経験を他者に伝えるための基礎となります。
- 表現活動を通して、イメージを形にする創造性や、多様な表現方法があることに気づく感性が育まれます。
- 季節感・自然への関心:
- 日本の四季の美しさや変化を肌で感じ、自然への親しみや畏敬の念を育みます。
- 自然がもたらす恵みや変化に対する感性が豊かになります。
- 論理的思考の芽生え:
- 記録を見返すことで、天気のパターンや季節の移り変わりといった変化の連続性に気づき、事象を関連付けて考える力が育まれます。
- コミュニケーション能力:
- 皆で観察したことを話し合ったり、自分の発見や表現を共有したりする中で、言葉で伝えたり、他者の話を聞いたりする力が養われます。
- 継続する力:
- 毎日の記録や継続的な観察を通して、一つの活動を続けることの大切さや楽しさを体験します。
実践上のポイントと安全への配慮
- 子供の気付きを大切に: 大人が一方的に教えるのではなく、子供たちが何に気づいたか、何を面白いと思ったかを聞き、その疑問や関心を深めるように寄り添います。
- 無理なく楽しむ: 毎日の記録が負担にならないよう、簡単な方法で継続することを心がけます。完璧を目指すのではなく、子供たちが楽しんで参加できることが一番です。
- 記録方法の多様化: 絵、記号、言葉だけでなく、写真や音声、拾った自然物を貼るなど、様々な方法で記録できるようにします。
- 安全への配慮:
- 屋外での観察時は、天候に応じた服装をさせ、熱中症や寒さ対策を行います。
- 危険な場所(車道近く、水の側など)に近づかないよう注意します。
- 虫などを観察する際は、触っても安全なものか確認します。
- 持ち帰る自然物も、安全で清潔なものを選びます。
- 他の遊びとの連携: 季節の歌を歌ったり、天気予報のまねっこをしたり、観察したことをテーマに製作をしたりと、他の活動と組み合わせることで、学びがさらに広がります。
まとめ
天気や季節の観察・記録・表現遊びは、特別な準備が少なくても、日常の中で手軽に取り入れられる質の高い学びの機会です。子供たちが自ら周囲の環境に目を向け、「なぜだろう?」「こうかな?」と考える探求心や、感じたことを自分なりに表現する力を育む上で、非常に有効なアプローチと言えます。
保育士は、子供たちの小さな気付きや疑問に耳を傾け、それらを遊びへとつなげる触媒となります。子供たちが自然の面白さや不思議さに触れ、自ら学びたいという気持ちを育んでいけるよう、穏やかで温かいまなざしで見守り、サポートしていくことが大切です。