「順序」や「パターン」の面白さを発見!子供の論理的思考力と学びに向かう力を育む遊び:保育での実践アイデアとねらい
「順序」や「パターン」の面白さを発見!子供の論理的思考力と学びに向かう力を育む遊び:保育での実践アイデアとねらい
子供たちは日々の生活の中で、無意識のうちに様々な「順序」や「パターン」に触れています。「朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べる」という一連の行動の順序や、「赤、青、赤、青」と繰り返される模様のパターンなど、身の回りにはこうした規則性が溢れています。これらの順序やパターンに気づき、理解しようとする営みは、子供たちの論理的な思考力や、物事の規則性を見つけ出す力を育む上で非常に重要です。
保育において、「順序」や「パターン」に関する遊びを取り入れることは、子供たちの知的好奇心を刺激し、自ら学びに向かう力を引き出す素晴らしい機会となります。これらの遊びを通して、子供たちは観察力、予測する力、規則性を見つけ出す力、そしてそれを表現する力を自然と身につけていきます。
この記事では、「順序」や「パターン」の面白さを発見する遊びに焦点を当て、保育現場で実践できる具体的なアイデア、その遊びが子供たちのどのような学びや力を育むのかという「ねらい」、そして実践上のポイントや応用についてご紹介します。
「順序」や「パターン」に関する遊びのアイデア
「順序」や「パターン」に関する遊びは、特別な道具がなくても、身近なものを使って手軽に始めることができます。
1. 色や形の繰り返しでパターンづくり
- 遊びの概要と目的: 色や形を規則的に並べ、簡単なパターンを作り、その規則性を見つけたり、続きを予測したりする遊びです。視覚的な規則性を理解し、再現する力を養います。
- 準備するもの: ブロック、ボタン、ビーズ、折り紙を小さく切ったもの、色画用紙を丸や四角に切ったもの、自然物(葉っぱ、木の実など)など、同じ形や色で複数ある身近な材料。
- 具体的な手順:
- 保育士が「赤、青、赤、青」や「丸、三角、丸、三角」といった簡単なパターンを提示します。
- 子供たちに「この次は何かな?」と問いかけ、パターンがどのように繰り返されているか気づくように促します。
- 子供たちが自分で同じパターンを再現したり、続きを作ったりしてみます。
- 慣れてきたら、「赤、赤、青、赤、赤、青」のように、少し複雑なパターンにも挑戦します。
- 自分でオリジナルのパターンを考えて作ることを促します。
- 年齢別のポイント:
- 3歳児:簡単な2色や2種類の形の繰り返し(ABABパターン)から始めます。保育士が一緒に手を動かし、声に出しながら行うのが効果的です。
- 4歳児:3色や3種類の形(ABCABCパターン)や、少し複雑なパターン(AABBAABBパターン)に挑戦します。
- 5歳児:より複雑なパターン(AABCAABCパターンなど)や、自分でルールを考えてパターンを作ることに取り組みます。使用する材料の種類を増やしたり、大きさも変えたりする工夫も加えます。
- 限られた環境での工夫: テーブルの上や床の一角で十分に行えます。材料は、おはじき、キャップ、洗濯ばさみ、など、保育室にあるものを活用できます。
- 集団と個別の関わり:
- 集団:大きな模造紙にみんなで協力して長いパターンを作る、リトミックで動きや音のパターンを繰り返すなど、集団で共通の規則性を楽しむ活動ができます。
- 個別:一人の子供が集中して自分だけのパターンを作る時間を持つことで、思考を深め、達成感を味わうことができます。
2. 物語や活動の「順序」を楽しむ遊び
- 遊びの概要と目的: 一連の出来事や活動の正しい順序を理解し、言葉や絵で表現する遊びです。時間的な順序感覚や、出来事の因果関係を捉える力を養います。
- 準備するもの: 連続する出来事を描いた絵カード(例:種をまく→芽が出る→花が咲く→実がなる)、一日の流れの絵、簡単な料理や製作の手順を示した絵や写真。
- 具体的な手順:
- 連続する出来事の絵カードを順番をばらばらにして提示します。
- 子供たちに、物語の流れや出来事の順序を考えながら、正しい順番に並べ替えてもらいます。
- なぜその順番になるのか、子供たちに言葉で説明してもらう機会を作ります。
- 子供たちが自分で描いた絵で、朝起きてから登園するまでの一日の流れを表現したり、簡単な製作の工程を絵で描いて説明したりします。
- 年齢別のポイント:
- 3歳児:2〜3枚の簡単な絵カード(例:食べる前→食べている)から始めます。保育士が言葉で順序を丁寧に説明します。
- 4歳児:3〜4枚の絵カードを扱い、少し複雑な物語や出来事の順序に挑戦します。
- 5歳児:5枚以上の絵カードを扱い、絵カードを見ながら自分たちで物語を作ったり、友達と協力して順序を考えたりします。料理や製作の手順を考え、言葉や絵で表現する活動を取り入れます。
- 限られた環境での工夫: 絵カードは手作りできます。フリー素材のイラストを使ったり、子供たちが自分で絵を描いたりしても良いでしょう。ホワイトボードや壁面に絵カードを貼って行うこともできます。
- 集団と個別の関わり:
- 集団:大きな絵カードをみんなで見ながら、次に何が起こるか一緒に考えたり、一日の活動の始まりと終わりを確認したりします。
- 個別:一人の子供がじっくりと絵カードと向き合い、自分のペースで順序を考える時間を持つことができます。
3. 動きや音のパターン遊び
- 遊びの概要と目的: 体の動きや音を使ってパターンを作り、それを再現したり発展させたりする遊びです。リズム感、記憶力、表現力、そして聴覚的なパターン認識力を養います。
- 準備するもの: 特に必要ありませんが、音の出るもの(手拍子、カスタネット、タンバリンなど)があるとより楽しめます。
- 具体的な手順:
- 保育士が簡単な動きのパターン(例:ジャンプ→拍手→ジャンプ→拍手)や音のパターン(例:パン、パン、トン、パン、パン、トン)を提示します。
- 子供たちに真似して繰り返してもらいます。
- 慣れてきたら、パターンを少しずつ長くしたり、複雑にしたりします。
- 子供たちが自分で考えた動きや音のパターンを発表し、みんなで真似して遊ぶ機会を作ります。
- 音楽に合わせてリズムパターンを手拍子したり、足踏みしたりします。
- 年齢別のポイント:
- 3歳児:短い、単純な動きや音のパターン(2〜3つの繰り返し)から始めます。
- 4歳児:少し長い、または2種類以上の動きや音を組み合わせたパターンに挑戦します。
- 5歳児:3種類以上の複雑なパターンや、自分で考えたオリジナルのパターンを発表します。リズム遊びや簡単な楽器を使った音のパターン演奏にも取り組みます。
- 限られた環境での工夫: 保育室内の空いているスペースや、戸外の広場など、少し体が動かせる場所があればどこでも可能です。特別な楽器がなくても、手や足、声など体全体を使って音やリズムを作ることができます。
- 集団と個別の関わり:
- 集団:みんなで一緒に同じパターンを繰り返すことで一体感が生まれ、協調性を育みます。パターンをリレー形式で行う遊びも楽しいでしょう。
- 個別:一人で様々な動きや音を試しながら、オリジナルのパターンをじっくりと作り出す時間を大切にします。
遊びのねらいと期待される効果
「順序」や「パターン」に関する遊びは、子供たちの様々な能力を育みます。
- 論理的思考力の基礎: 物事の規則性を見つけ、次に何が来るかを予測する過程を通して、論理的に考える力の基礎が培われます。これは、今後の学習における問題解決能力や推論能力に繋がる重要な力です。
- 観察力と集中力: パターンを正確に認識するためには、細部を注意深く観察し、集中して取り組む必要があります。
- 予測する力: 規則性がわかると、「きっと次はこうなる」と予測する力が育まれます。これは、科学的な探求や日常生活での見通しを持つことにも繋がります。
- 記憶力: 提示された順序やパターンを覚えて再現することで、短期記憶や作業記憶が鍛えられます。
- 表現力と創造性: 自分でオリジナルの順序やパターンを考えることで、自分の内にあるアイデアを形にする表現力や創造性が引き出されます。
- 数学的な感覚: パターンは、数列や図形の規則性といった、小学校以降で学ぶ数学の基礎概念に繋がります。遊びを通してこれらの概念に触れることで、数学への興味や抵抗感をなくすことに繋がります。
- 学びに向かう力: 「分かった!」「できた!」という成功体験や、「次はどんなパターンにしよう?」という探求心が、子供たちが自ら積極的に学ぼうとする意欲(学びに向かう力)を育みます。
実践上のポイントと応用例
- 答えを教えすぎない: 子供たちが自分で規則性に気づくことが重要です。すぐに答えを教えるのではなく、「あれ?何か繰り返しているかな?」「最初と同じものが出てきたね」など、ヒントを出しながら自分で発見できるように促します。
- 間違いも大切な学び: パターンを間違えた場合も、「惜しいね!どこが違うかな?元のパターンと比べてみよう」などと声をかけ、間違いから学ぶ機会と捉えます。
- 様々な感覚を使う: 視覚だけでなく、聴覚(音のパターン)、触覚(手触りの異なるものを並べるパターン)、身体感覚(動きのパターン)など、五感を刺激する多様なアプローチを取り入れることで、子供たちの興味をより引き出せます。
- 生活の中でのパターン探し: 遊びの時間だけでなく、降順に並んだ階段の段数、カレンダーの日付の繰り返し、給食の献立のサイクルなど、日常生活の中にある様々な順序やパターンに子供たちが気づけるよう声かけをすることも効果的です。「今日は火曜日だから、明日は何曜日になるかな?」「靴箱の数字はどんな風に並んでいる?」など、日常のふとした瞬間に問いかけを挟みます。
- 他の遊びとの組み合わせ: 積み木で同じ形のブロックを規則的に重ねていく、お絵かきで模様を描く、ダンスで決まったステップを繰り返すなど、他の遊びの中にパターンや順序の要素を取り入れることで、遊びの幅が広がります。
- 保護者への共有: 園での「順序」や「パターン」に関する子供たちの様子や、遊びを通して育まれる力について保護者会だよりや連絡帳で共有することで、家庭でも身近な物(並んだ絵本、おもちゃの色など)を使ったパターン遊びや、日常の順序の確認に取り組んでもらうきっかけになります。「順番って大切だね」「同じ形が並んでいるね、不思議だね」といった声かけが、子供たちの気づきを深めることを伝えましょう。
まとめ
「順序」や「パターン」に関する遊びは、特別な教材がなくても、子供たちの身近な世界に存在する規則性への気づきを促し、論理的思考力や学びに向かう力の基礎を育む、シンプルながら非常に奥深い遊びです。保育士が意図的にこれらの遊びを取り入れ、子供たちの「わかった!」「おもしろい!」という声を引き出すことで、子供たちの探求心はさらに刺激されるでしょう。日々の保育の中で、子供たちが「順序」や「パターン」の面白さを発見する瞬間を大切に見守り、それぞれの「好き」を伸ばしていく関わりを続けていきましょう。