「数」や「量」の面白さを発見!子供の算数的な感覚と論理的思考を育む遊び:保育での実践アイデアとねらい
子供の「数」や「量」への興味を育む遊び
子供たちは日常生活の中で、無意識のうちに数や量に触れています。おやつの数を数えたり、砂場でバケツいっぱいに砂を入れたり、積み木を「たくさん」積んだり。こうした経験の一つ一つが、将来の算数的な思考の基礎となります。
ウェブサイト「わくわく学びスイッチ」が提案する遊びや環境づくりは、子供が自ら学びたくなる「好き」を刺激することを大切にしています。「数」や「量」にまつわる遊びも、単に数え方を教えるのではなく、「ふしぎだな」「面白いな」という子供の探求心を引き出す視点を持つことが重要です。
ここでは、保育の場で実践できる、子供たちの算数的な感覚と論理的思考力を育むための「数」や「量」に親しむ遊びのアイデアと、そのねらいをご紹介します。
1. 数え遊び:身近なものを数えてみよう
遊びの概要と目的
身の回りにある様々なものを数える活動を通して、数詞とものの数を一致させる「一対一対応」の概念や、数の順序性を体感します。物の集合とその数を結びつける基礎を養います。
準備するもの、材料
- 積み木、おはじき、どんぐり、石、葉っぱなど、小さくて数えられるもの
- 箱や容器(お菓子の空き箱、ペットボトルなど)
- 数カードや数字が書かれたもの(任意)
具体的な手順や方法
- 子供たちが集めたもの(例:どんぐり)をテーブルに広げます。
- 保育士が一つずつ指差しながら、子供と一緒に「いち、に、さん…」と声に出して数えます。
- 子供にも一つずつ指差しながら数えてもらうように促します。
- 数え終わったら、「どんぐりは全部で〇個だね」と確認します。
- 数を分けて(例:大きいどんぐりと小さいどんぐり)それぞれの数を数えたり、合計数を数えたりする活動も取り入れます。
- 箱の中に物を〇個入れてみる、という活動も面白いでしょう。
年齢別のポイントや難易度調整のヒント
- 2歳児〜: 1対1対応はまだ難しくても、「たくさん」「すこし」といった量の感覚や、数詞のリズムを楽しむことから始めます。「いち、に、さん」と繰り返し声に出すだけでも十分な経験になります。
- 3歳児〜: 1対1対応を意識し始めます。指差しや物の移動と数詞を合わせる練習をします。数え間違いがあっても指摘するより、一緒に数え直すことを大切にしましょう。
- 4歳児〜: 物の順番を変えても数が変わらない「保存の法則」の理解につながる経験を重ねます。〇個と〇個を合わせるといくつ? といった簡単な足し算的な問いかけもできます。
その遊びが、子供のどのような「好き」を刺激し、どのような学びや力が育まれるのか(ねらい)
- 数への興味・関心: 身近なものが数えられる対象であることに気づき、数そのものへの興味が生まれます。
- 量と数の関係の理解: 具体的な物の数と、それを表す数詞や数字が結びつくことで、量と数の関係の基礎的な理解が進みます。
- 集中力と順序性: 一つずつ順番に数えることで、集中力や物事を順序立てて行う力が養われます。
- 論理的思考の基礎: 物の数を正確に把握しようとする過程で、論理的に考える力の基礎が培われます。
安全に実施するための注意点
小さすぎる物は誤飲の危険がありますので、子供の年齢に合わせて適切なサイズの物を選んでください。自然物を使用する場合は、事前に洗浄するなど衛生面にも配慮します。
保護者への説明に役立つ視点や伝えるべきポイント
「お家でも、おもちゃの数を数えたり、靴下を数えたり、食事の準備で使うお皿の数を数えたりと、日常生活の中で一緒に数える機会を持ってみてください。遊びを通して自然に数に親しむことで、将来の算数への苦手意識を減らすことにつながります。」
2. 量比べ遊び:どっちが大きいかな?多いかな?
遊びの概要と目的
物の大きさや量、長さなどを比較する活動を通して、「多い・少ない」「大きい・小さい」「長い・短い」といった比較の概念を体感し、量感を養います。
準備するもの、材料
- 大きさの違うコップや容器(透明だと分かりやすい)
- 砂、水、ビー玉、豆、新聞紙など様々な素材
- 長さの違う紐や棒
- 重さの違う物(石、葉っぱなど)
具体的な手順や方法
- 大きさの違うコップを並べ、「どっちが大きいかな?」と尋ね、実際に水や砂を入れて「どっちがたくさん入るかな?」と比較してみます。
- 複数のコップを用意し、水や砂の量を意図的に変えておき、「一番多いのはどれかな?」「少ない順に並べてみよう」といった活動を行います。
- 同じ種類の物(例:積み木)を二つのグループに分け、数えずに見た目で「こっちのグループの方が多そうだね」と比較し、その後に実際に数えて答え合わせをします。
- 長さの違う紐を並べ、「どっちが長い?」と比べたり、地面に線を引いて「どっちが遠くまで届くか競争しよう」といった活動もできます。
年齢別のポイントや難易度調整のヒント
- 2歳児〜: 「いっぱい」「これだけ」「もっと」といった簡単な言葉で量の感覚に触れます。コップに砂や水を入れる感触遊びの中で、「たくさん入ったね」「もうちょっと入れようか」と声をかけます。
- 3歳児〜: 二つの物を並べて直接比較する活動が中心になります。「こっちの方が大きいね」「こっちの方が長いね」と言葉で確認していきます。
- 4歳児〜: 三つ以上の物を量や大きさの順に並べる活動に挑戦します。見かけによらない量(例:細長い容器と背の低い太い容器の水の量)があることに気づく経験も大切です。
その遊びが、子供のどのような「好き」を刺激し、どのような学びや力が育まれるのか(ねらい)
- 比較概念の獲得: 物事を比べる視点が育ち、「多い・少ない」「大きい・小さい」などの言葉の意味を具体的に理解します。
- 量感の育成: 実際の物に触れて量を体感することで、見た目である程度の量を捉える感覚(量感)が養われます。
- 観察力と探求心: なぜこっちの方が多いのだろう?と考える過程で、観察力や探求心が刺激されます。
- 論理的思考の基礎: 比べる基準を意識したり、順序立てて並べたりする活動を通して、論理的に考える力の基礎が育まれます。
限られたスペースや予算で実施するための工夫
特別な道具は必要ありません。保育室にあるコップやバケツ、砂場セット、自然物、廃材(ペットボトル、箱など)を工夫して活用できます。
保護者への説明に役立つ視点や伝えるべきポイント
「物の大きさや量を比べる遊びは、身の回りにたくさんあります。例えば、食卓で『どっちが大きいおにぎりかな?』と聞いたり、絵本のページ数を見ながら『こっちの絵本の方が厚いね(ページが多いね)』と話したりすることも、子供の量感を育む大切な機会になります。」
3. 簡単な計測遊び:測ってみたらどうなるかな?
遊びの概要と目的
手や足、紐、積み木といった身近な非標準単位を使って物の長さや高さを測ってみる活動を通して、「測る」という行為の意味や、同じ物差しを使えば誰が測っても同じ結果になるという計測の基礎概念に触れます。
準備するもの、材料
- 子供たちの手や足
- 紐、リボン、毛糸
- 同じ大きさの積み木やブロック
- メジャーや定規(導入として見せる程度でも可)
- 測りたい物(机、椅子、お部屋の端から端までなど)
具体的な手順や方法
- 机の長さを測ってみます。まず子供に自分の「手」を使って、端から端まで何個分になるか数えてもらいます。「〇〇君の手で〇個分だったね」と結果を記録します。
- 次に、別の子に同じ机を測ってもらいます。「あれ?〇〇ちゃんの手だと数が違うね。どうしてだろう?」と一緒に考えます。(手の大きさが違うことに気づく促し)
- 次に、同じ大きさの積み木を使って測ってみます。積み木を隙間なく並べて数を数えます。「積み木だと〇個分になったね。〇〇君が測っても、〇〇ちゃんが測っても、同じ積み木の数になったね!」と確認します。
- 紐を使って、友達の身長を測ってみたり、お部屋の色々な場所の長さを測ってみたりします。後で紐を比べて、長い・短いを確認します。
その遊びが、子供のどのような「好き」を刺激し、どのような学びや力が育まれるのか(ねらい)
- 計測概念の理解: 「測る」という行為が、物の大きさを数値で捉えることであるという基本的な考え方に触れます。
- 比較と順序: 測った結果を比較することで、物の長短や高低をより正確に認識できるようになります。
- 問題解決と発見: なぜ人によって測る回数が違うのか、同じ物差しを使えばどうなるのか、といった疑問を持つことから、問題解決の視点が生まれます。
- 協調性: 友達と協力して長いものを測ったり、お互いを測り合ったりする活動を通して、協調性が育まれます。
集団での活動と個別の関わり方のヒント
集団で同じものを協力して測る活動は、計測の基準を揃える大切さや、友達と協力する経験につながります。一方、子供が個人的に興味を持ったものを自由に測ってみる時間を持つことで、個々の探求心を深めることができます。「これ測ってみたいな」という声に耳を傾け、一緒に道具を探したり、測り方を考えたりする個別のかかわりも大切です。
保護者への説明に役立つ視点や伝えるべきポイント
「『測る』遊びは、物の長さを正確に把握することだけでなく、『どうやって測ればいいかな?』と考える過程が大切です。お家でも、例えば『お友達からのお手紙、この机より長いのかな?』と一緒に紐を使って測ってみたり、『お父さんの足、〇〇ちゃんの足いくつ分かな?』と比べてみたりするのも面白いでしょう。身近な物を『測る』視点を持つことで、物の大きさを捉える力が自然と育まれます。」
まとめ
「数」や「量」に関する遊びは、特別な教材がなくても、身近にある素材や日常のふとした瞬間に取り入れることができます。子供たちが「数って面白いな」「量ってなんだか不思議だな」と感じる経験を重ねることで、算数的な感覚が豊かになり、論理的に考える力の基礎が培われていきます。
大切なのは、正解や効率を求めるのではなく、子供たちが自ら発見し、考え、表現するプロセスを温かく見守り、必要に応じてさりげないヒントや共感の言葉をかけることです。子供たちの「わくわく学びスイッチ」がオンになるような、数や量との楽しい出会いをたくさん提供していきましょう。