「コレクション」の喜びを!集める・収集する遊びで育む子供の探求心と学び:保育での実践アイデアとねらい
「コレクション」の喜びを集める・収集する遊びで育む
子供たちは、公園でどんぐりを拾ったり、道端で色とりどりの石を見つけたり、気に入ったシールやカードを集めたりと、何かを集めることに強い興味を示すことがあります。この「集める」という行為は、単なる遊びに見えますが、子供の探求心や多様な学びを育む素晴らしい機会となります。
ウェブサイト「わくわく学びスイッチ」では、子供が自ら学びたくなる「好き」を刺激する遊び方や環境づくりを紹介しています。この記事では、保育の現場で「集める・収集する遊び」を取り入れることのねらいと、実践的なアイデア、そして子供たちの学びを深めるための関わり方について解説します。
集める・収集する遊びとは
集める・収集する遊びとは、特定のテーマや基準に沿って、身の回りのものや情報を意識的に集める活動です。自然物、廃材、特定のカテゴリーの物品、あるいは観察したことや調べたことなどの「情報」も収集の対象となり得ます。子供たちは、集める過程そのものや、集めたものを眺めたり整理したりすることに喜びや面白さを見出します。
この遊びは、特別な材料や広いスペースがなくても、子供たちの興味や身近な環境を活かして実践できる点が特徴です。
集める・収集する遊びのねらいと期待される学び
集める・収集する遊びからは、子供たちの多様な側面が育まれます。主なねらいと期待される学びは以下の通りです。
- 探求心と観察力: 何を集めるか、どこにあるか、どんなものかを知ろうとすることで、自然と周囲を注意深く観察するようになります。物の違いに気づき、探求心を深めます。
- 分類力と整理力: 集めたものを「色」「形」「大きさ」「種類」などの基準で分けたり並べたりすることで、分類する力や論理的な思考の基礎が育まれます。集めたものを保管・整理する過程で、物を大切にする気持ちや整理する習慣も身につきます。
- 知識と興味の深化: 特定のものを集める活動を通して、その物事に関する知識が深まります。図鑑や絵本で調べたり、大人や友達に質問したりすることで、学びへの意欲が高まります。
- 集中力と持続力: 目標を持って集める、コレクションを完成させようとする過程で、一つのことに集中して取り組む力や、継続する力が養われます。
- コミュニケーション力と社会性: 集めたものを見せ合い、見つけた時の喜びや物の特徴について話すことで、言葉による表現力やコミュニケーション力が育まれます。友達との共通の関心事を見つけたり、物の交換をしたりする中で、社会的な関わりも生まれますことがあります。
- 自己肯定感と達成感: 自分で「好き」なものを見つけ、集める目標を達成することで、「できた!」という喜びや達成感を感じ、自己肯定感を高めることができます。
- 学びに向かう力: 好きなこと、興味のあることに対して主体的に関わり、楽しんで学ぶ姿勢が育まれます。これは小学校以降の学びにもつながる重要な力です。
実践アイデア:様々な「コレクション」を楽しもう
保育の現場で取り入れられる、具体的な集める・収集する遊びのアイデアをいくつかご紹介します。
1. 自然物コレクション
- 概要・目的: 散歩や戸外遊びで、落ち葉、木の実、石、枝、草花などを集めます。季節の変化や自然の多様性に触れ、観察力を育みます。
- 準備するもの: 集めるための袋やカゴ、持ち帰り用の箱や容器、集めたものを飾る・整理する場所(棚、トレイ)、必要に応じて図鑑やルーペ。
- 具体的な手順:
- 散歩や戸外活動の前に、「今日はどんなものを見つけられるかな?」と問いかけ、子供たちの期待を高めます。
- 安全な場所で、子供たちが興味を持った自然物を自由に拾い集めます。毒のある植物や触ると危険なものに注意が必要です。
- 保育室に持ち帰り、種類ごとに分けたり、色や形で並べたりして整理します。
- 集めたものを展示するコーナーを設け、子供たちがいつでも見たり触れたりできるようにします。図鑑と見比べて名前を調べたり、絵を描いたり、集めたものを使って製作活動に発展させたりもできます。
- 年齢別のポイント:
- 低年齢児:拾う行為自体を楽しみます。大人が一緒に「これは大きいね」「きれいな色だね」などと声をかけ、物の特徴への気づきを促します。
- 中年齡児:簡単なテーマ(例:「茶色い葉っぱ」「ツルツルした石」)を決めて集めたり、自分で見つけた基準で分けたりすることを楽しみます。
- 高年齢児:図鑑を使って名前を調べたり、見つけた場所や日付を記録したりと、より探求的な活動につなげられます。友達と見つけたものを交換するなどの関わりも生まれます。
- 限られた環境での工夫: 園庭の片隅やプランター周りでも、小さな石や落ち葉、枯れ枝などは見つかります。室内であれば、事前に大人が用意した複数の自然物の中からテーマに合うものを選んで集める活動も可能です。
- 集団と個のバランス: 皆で同じ場所で収集活動を楽しむ中で、それぞれが異なるものに興味を持つことを認めます。個別に「〇〇くんはこんなに見つけたんだね!」と声をかけ、その子の発見を共有します。皆で集めたものを展示するコーナーと、個人の「宝物」を入れる箱を用意するなど、両方の機会を設けることができます。
2. 廃材コレクション
- 概要・目的: 空き箱、ペットボトルのキャップ、トイレットペーパーの芯、布切れ、ボタンなど、様々な廃材を集めます。物の素材や形に触れ、製作意欲やアイデアを刺激します。
- 準備するもの: 集める廃材の種類を事前に知らせる、廃材を入れるストックボックスやコーナー。
- 具体的な手順:
- 保護者や地域に協力を依頼し、安全で清潔な廃材を集めます。(洗う、乾燥させるなどの配慮が必要です)
- 子供たちがいつでも自由に使えるように、種類ごとに分けて廃材コーナーにストックします。
- 「〇〇(廃材)を集めて何か作ってみよう」「面白い形の廃材探し」など、収集そのものを目的とした活動として提案したり、製作活動の材料集めとして位置づけたりします。
- 集めた廃材を「ツルツル」「デコボコ」などの触感や、「丸いもの」「長いもの」などの形で分類する遊びを行います。
- 限られた環境での工夫: 少量の廃材でも、色や形、素材の違いを意識して集めるだけでも十分な学びになります。特定の廃材(例:牛乳パックの蓋だけ)にテーマを絞って収集するのも良いでしょう。
- 保護者への説明に役立つ視点: 家庭から出た廃材が、園で子供たちの創造性を刺激する宝物として活用されていることを伝えます。「ご家庭でもお子さんと一緒に、身の回りのものの素材や形に注目して集めてみるのも楽しいですよ」などと声をかけるのも良いでしょう。
3. 色・形コレクション(室内遊び)
- 概要・目的: 保育室や身の回りの環境の中から、特定の「色」や「形」のものを探し出して集めます。観察力や分類力を養い、環境への気づきを促します。
- 準備するもの: 集める色や形を示した紙、集めたものを入れるカゴや箱。
- 具体的な手順:
- 「今日は『赤いもの』を集めてみよう!」「『丸いもの』を探してみよう!」などとテーマを設定します。
- 子供たちは保育室の中を歩き回り、テーマに合うものを探します。(安全のため、高いところや危険な場所には注意が必要です)
- 見つけたものを集める場所に持っていきます。
- 集めたものを皆で見ながら、「これは〇〇だったね」「こんなところにも赤いものがあったね」などと振り返ります。
- 集団と個のバランス: 一緒に探す活動ですが、それぞれが見つけたものを尊重します。見つけにくい子にはヒントを与えたり、一緒に探したりと個別の関わりを行います。
実践上のポイントと大人の関わり
「集める・収集する遊び」をより豊かな学びに繋げるためには、保育士の適切な関わりが重要です。
- 子供の「好き」を大切にする: 何を集めるかは子供の興味に委ねることが基本です。大人がテーマを提案する場合も、子供がそれに乗るかどうかは尊重します。子供が特定のものに夢中になって集めている時は、「すごいね!〇〇がこんなに集まったね!」と共感を示し、その興味を認めます。
- 安全面に配慮する: 集める場所や物について、事前に危険がないか確認します。口に入れる可能性がある小さな物、植物の毒、衛生面など、子供の発達段階に合わせて安全対策を講じます。拾ってはいけない物(ゴミ、危険物など)がある場合は、事前に子供たちに伝えておきます。
- プロセスを重視する: 集める「量」や「完成度」ではなく、集める過程での子供の発見や気づき、集中している姿を大切に見守ります。
- 環境を整える: 集めたものを保管したり、展示したりする場所を用意します。分類するための道具(箱、トレイ、シートなど)を用意しておくと、子供が自分で整理する活動を促せます。図鑑や関連する絵本をそばに置くのも有効です。
- 対話を楽しむ: 子供が見つけたもの、集めたものについて「これは何?」「どこで見つけたの?」「どんな形かな?」などと問いかけ、言葉による表現を引き出します。子供の話をじっくり聞き、共感する姿勢を示します。
- 他の遊びとの連携: 集めたものを製作の材料にしたり、数遊びや分類ゲームに使ったりと、他の活動と結びつけることで、遊びの幅が広がります。
- 限られた予算での工夫: 自然物や廃材は、予算をかけずに集められる材料です。特別な道具がなくても、身近なもの(空き箱、トレイなど)を工夫して活用できます。
まとめ
集める・収集する遊びは、子供の身近な「好き」や自然な興味から始まり、探求心、観察力、分類力、知識、コミュニケーション力、自己肯定感など、多様な学びを育む可能性に満ちています。保育士が子供たちの収集活動に寄り添い、安全な環境を整え、適切な声かけや問いかけを行うことで、子供たちは「集めることって面白い!」「もっと知りたい!」という学びへの意欲を自ら高めていくことでしょう。日々の保育の中で、子供たちの「コレクション」を温かく見守り、学びのスイッチをオンにする機会をたくさん作ってください。